建築板金 / 生田 隆一

平成8年度認定
昭和6年生 / 神戸市須磨区在住
勤務先:生田板金工作所

伝統的な銅板を使用した神社、寺院、茶室等の屋根葺工事を得意とし、材料の精密な加工と現場における施工で熟練した技術を発揮。

受賞歴

実用性と芸術性をたくみに融合


一枚の銅板が、生田さんの手にかかると芸術品に生まれ変わる。神社、寺院、茶室などの屋根葺工事を得意とするが、とくに神社の屋根は優雅な曲線で表現する必要があり、その技法として「箕甲葺(みのこうぶき)」や「唐羽風(からはふう)」といった手法を用いる。これは、段を重ねるごとに勾配の角度がきつくなるため、材料の精密な加工と共に、現場での施工に熟練した技術と経験が不可欠。生田さんの仕事場に置かれてある数十種類ものハサミとノミが、高度な技術を物語っている。
軒先部分の毛管現象を抑えて水切りを良くする“釘かくし”を考案したほか、精密さを要求される鬼瓦の製作でも、持ち前の手先の器用さをいかんなく発揮する。イメージする型をまず設計図に表し、次に展開図に起こして、いよいよ実際の加工にかかる。ハサミで切断したものを、これまた何十種類もの木槌を使いこなして立体の造型物に仕上げていく。「手間ひまかかる仕事ですが、好きなものですから…」と目を細める。


生田さんは四代目。同業者が減少を続けるなかで、かたくなに伝統の技を守り通し、さすがはと唸らされる名人芸をこともなげにやってのける。これまで手がけてきた中でも主なものは、須磨寺・禅昌寺・大石船寺神社など孫子の代まで継承されていくものが多いだけに、神経をすり減らしてもやり甲斐はあるという。
季節の寒暖差で伸縮する金属の性質を知り尽くした上で、実用性と芸術性をたくみに融合させた仕事を身上とする職人中の職人だ。