内装仕上げ / 中條 昇

平成13年認定

昭和12年生 / 神戸市須磨区在住
勤務先:中條装飾

床仕上げ施工のうち、プラスチック系仕上げ工程の長尺ビニールシートの継目熱風溶接工法を得意とする。

受賞歴

  • 職業能力開発関係厚生労働大臣表彰
  • 卓越した技能者(現代の名工)
  • 黄綬褒章

美の追求は足もとから


昭和30年代、中條さんが修行に入ったころ、自転車の後ろに荷台を引っぱって作業現場迄出かけるのが一苦労だった。「そのうちに車時代になって、便利になりました。生活様式の変化につれて、床材も色々な種類のものが出まわるようになりましてね、それをどう活かすかという技術が試されるようになりました」 リノリューム、リノタイル、塩ビシート…建物や用途によって使い分けることはもちろん、それらをいかに美しく貼り上げるかというところに腕がモノをいう。「道具や接着剤が良くなって、ますます仕事がおもしろくなってきました」
つらいのは中腰での作業が多いこと。不自然な姿勢の連続で、腰痛が職業病のようになりかねない環境にも耐えられる力はどこから湧いてくるのか?「新しい建物だけでなく、古い建物の修繕も多いのですが、汚いところが美しくなっていく。それも、自分の手で見違えるように仕上げていくところに飽きることのない魅力を感じます」


昔も今も変わらない仕事の第一歩は掃除から始まるということ。内装の中でも、とくに中條さんが得意とする床は、下地を整えなければどんな床材を持って来ても、うまく納まらない。文字通り足元を固めることが大切。技術のみならず、道具類についても工夫を重ね、糊刷毛やミゾ切りも改良を加えて、持てる技術を十分発揮できるようにした。 47年間に手がけてきた主な建物は大阪駅、兵庫県庁、神戸市役所、中央市民病院、オリエンタルホテルなど、広く知られる公共性のあるものから個人の住宅まで枚挙にいとまがないほど。「同業の仲間うちでもいやがられる階段の床張りが好きなんです」と笑う。人のいやがる面倒な作業を率先して引き受けるやさしさと、難しい仕事にこそやり甲斐を見出す職人だましい。
一段、一段、コツコツと床材を採寸し、貼り付け、建物を完成に導いていくさまは、中條さんの人生そのままの投影でもある。