中華料理 / 岡本 和弘

平成19年度認定

昭和33年生 / 神戸市長田区在住
勤務先:香港海鮮料理 和(カズ)

世界の情報を自分流にアレンジして、ユニークで斬新な中国料理の傑作を創出。

受賞歴

  • 調理師免許
  • 日本中国料理協会 功績賞
  • 兵庫県調理師団体連合会 会長賞

現代のニーズに応えて、格調ある味のおもてなしを


人の生き様は料理と同じように味わい深いものである。岡本和弘さんは大阪天王寺の生まれ。「学校の先生になりたかったんです」と、少年時代を振り返って語る。「先生が無理なら料理人にと思ってました」。食いだおれの町・大阪で、調理師学校を卒業して、中華料理店「太湖」に就職する。教育畑を志しただけのことはあり、人一倍の探求心で中華料理の極意にせまるべく、着実な歩みを見せた。夢の人工島の出現と共に神戸ポートピアホテルが誕生することとなり、その中国レストラン「聚景園」にスカウトされた。神戸が生んだ偉大な作家・陳舜臣さんが命名し、名門のレストランに成長した「聚景園」で、岡本さん自身も成長し、今では料理長の肩書きを持つ。
神戸を代表するホテルの中国料理店という条件から洋風料理を好む風潮も見逃さず、岡本さんはあくまで中華の心を大事にしながらも、独自の調理法を工夫し、さすがはと周囲をうならせている。「中国料理をそのまま日本で提供しても、予想以上の感動は生まないでしょう」と、明解に言い切る。その根拠は「料理はそれぞれの土壌が自然に誕生させたものです。日本人にはこの環境が培った味覚というものがあり、異なる環境ではぐくまれた中国料理はやはり、日本人の口に合うよう、素材から味付けまでアレンジした方が素晴らしい」とその論理は明解きわまりない。
岡本流としては、四季折々の食材を生かした料理を積極的に新しいメニューに取り入れるやり方でファンを獲得してきた。例えば、海老に細麺を巻いたものに、マスカットソースを添えるという大胆なメニューを打ち出したりもする。フランス料理にも使える素材が彼の手にかかると、ひと味もふた味も違ったユニークで斬新な中国料理になる。「中国料理そのものが、長い歴史の間に大きな変遷を乗り越えて今日の地位を築き上げてきたのですよ。伝統を尊重しながらも、それに甘んじることなく、やはり現代にマッチした料理法でお客様の期待に応えていくべきだと私は思います」。自らも情報の入手のためには労をいとわず、現地に乗り込む手間暇を惜しまない。一口に中国料理と言っても、いくつもの流れがあるが、どちらかと言えば、広東料理ベースの香港料理の流れを大切にする岡本さんは、年間3~4回は香港に出向いて情報入手につとめる。


何故そんなにまで?という疑問に岡本さんは「英国領時代からの歴史をふまえて、香港には世界の情報が集まっているからです」とずばり一言。 自ら最新情報の集まる香港で、プロの料理人仲間と切磋琢磨の末、日本に最新のネタを持ち帰り、自分ながらの創意工夫を重ねるのである。そして、文明開化の時代から外国と深くかかわってきた神戸を代表するホテルで、日々のメニューに生かす。「場合によっては、中国料理は油分や添加物が多く、体に良くないイメージを持たれている悲しい一面がなきにしもあらずですが、もともと中国には薬膳料理と言う体に良い料理があります。ヘルシーなメニューで現代のニーズに応えることも私の使命と心得ています」。古典的な中国料理特有の刀法技術を駆使した前菜「垪盆(ピンプァンペン)」も得意な岡本さんはまさに、温故知新を中国料理において地で行く名人である。