機械金属(仕上げ) / 浜崎 昭彦

平成18認定

昭和30年生 / 神戸市東灘区在住

ニット丸編み機の柄切替装置や電子制御装置の組み立て及び修理に卓越した技術を誇る。

受賞歴

  • 治工具仕上げ 1級
  • 仕上げ 特級
  • 兵庫県職域における創意工夫者表彰(兵庫工業会)

世界をリードするニット丸編み機を支える


かつてはメリヤスと言われ、昨今はジャージなどと表現されるニット生地を編む機械の専門メーカーが福原精機製作所である。ドイツのメーカーと並んで世界のビッグ2と称賛されるにおよんだ要因は高品質高性能をささえる高い技術力にほかならないが、精密さが要求される編み機の製作においては、今なお手作業が大きくモノをいう。
ニット丸編み機の柄切替え装置(オートストライパー)や電子制御装置(アクチュエーター)の組立及び修理において、浜崎さんは精密ヤスリでアクチュエーター擦り合わせ、姿合わせ作業を公差千分の五以内で仕上げる技術を、また精密部品の組立調整を公差百分の一以内で行う技術を有している。「精密編機においては微妙に誤差が生じるのです。いかんともし難いその誤差を公差と呼んでいますが、それを目視でカバーして公差をゼロにするのが私たちの目標なのです」。
浜崎さんは和歌山県白浜の生まれで、田辺の高校を卒業の時、たまたま編針の工場が近くにあったことから、緻密な仕事に関心を抱き、自ら「こまやかな仕事を選んで当社に入社しました」と語る。勤続32年の間に百を超える同業の中でも福原精機がトップに成長した影に浜崎さんの技術が貢献したことはまちがいない。また、浜崎さん自身も大きく成長させてもらった。ニット丸編み機製作のプロフェッショナルが言う。「公差百分の一以下の技術を駆使するには経験だけではダメで、素質も重要です。そんな才能を十二分に活かすためにどうするかですよね」。


今では後進の育成にも力を発揮し、課のグループリーダーとしても積極的に活動している。個々の才能をいかんなく作業に反映させるために、流れ作業のロット作業から、一人が責任を持って修理完成させる一個流し作業(セル方式)に移行させたうえ、部品の簡素化や治工具改良につとめ、月産能力を倍以上に向上させた実績もある。こんな浜崎さんが日頃から心がけていることは、幅広い知識の吸収。「五感の鋭さと知識の豊富さが精密機器の製作においても大事なんです」と思いがけない言葉を吐く。「精密機械は生きものですから、命を吹き込む担当者の人格に左右されるわけですね」専門書はもちろん、文学作品に至るまで読書に励むのもそのため。「品物はお金で買えますが、技術はお金で買えないのでコツコツと修練を積み重ねるしかありません」。一台一台精魂傾けて完成させた機械の多くが外国へ送り出されるが、金属摩耗などの修理で中国などへ出張することも。「荒っぽい使い方をされていると悲しいですね。なんとか必死で動いていた機械に私が手を加えると、だだをこねたように動きをとめてしまうことがあるんです。よしよし、といたわるように点検補修して元気にしてやるんです。確かに精密機械は生きてますよ」体験からにじみ出た重い言葉だ。西神サイエンスパーク内の工場が世界のニット丸編み機をリードし、そのブランドを守る浜崎さんがここにいる。