建築大工 / 三橋 孝一

昭和7年生 須磨区在住
勤務先:(株)三橋工務店

和風建築の分野で日本古来の規矩術を完全にマスター。
多くの社寺建築、和風建築の入母屋、寄棟造りを手がける。

受賞歴

さしがね一本で屋根の勾配を


小学校卒業のころ、昭和20年の神戸大空襲で、家が焼け、その焼けた街を目の当りにして、自分の手で、家や街の復興をと、建築の道を志した。その後、8年間の修業を経て、生れた土地、垂水区で独立開業。「西宮に知り合いが数人いましてね。その紹介で当時多かった農家の建築をたくさん手がけることとなりました。」それが和風建築の腕を上達させる結果につながった。
西宮市の西蓮寺をはじめ、社寺建築や、一般の入母屋・寄棟造りなどを多数手がけ、その技術の高さが評価されている。「和風建築は屋根が命です。独特のカーブを描く日本屋根は、雨水を流す勾配であると同時に、日本建築ならではの美しさをかもし出す一つの要因になっていると思います。」その勾配を作り出すのが、伝統の規矩術。「規は円と法を表し、矩は方形と型を表します。直角に曲がったものさし、さしがね一本で大工は屋根の勾配をたちどころに計算します。」


その技術が忘れ去られようとしている。だから三橋さんは自ら教科書を作り、後進の教育に当たる。「建築の最初に墨付の方法で木の寸法を割り出しますが、その時に使うのが規矩術なんです。聖徳太子の時代からあったさしがねを自在に操る古来の技術を心ある次の世代に」と意欲を燃やす三橋さん。神戸市の住宅相談員として一般市民のマイホームの相談にも応じるなど、多忙な毎日だ。