洋菓子 / 上野 庄一郎

平成7年認定
昭和18年生 平成29年没
勤務先:フーケ(株)


スポンジ台の製造技能に優れる。
工芸菓子の分野でも第20回全国菓子大博覧会総裁賞など受賞多数。

受賞歴

味で至福の時間を提供する名人


出征する父を舞鶴まで見送った母のお腹にいたのが上野さん。グアムで父が戦死し、おじに育てられた。「学校の行き帰りにパンと洋菓子の店があり、いいにおいがしてまして、大きくなったらケーキ屋さんになりたいと思いました。」中学校を出て名古屋のケーキ卸商に就職、その後神戸に来て元町の老舗和菓子店に勤めた。「和菓子屋がそのうちに洋菓子を始めることになり、色々なケーキ作りを手がけました。」そのころ、洋菓子の原点であるスポンジ台のきめがおしなべて粗い傾向であったのを、和菓子の水々しさを採り入れ、適度な弾力性”しとり”のあるスポンジ台に仕上げることに成功した。
独立して西洋菓子処「フーケ」を興してからもこの経験がモノを言った。「修行先の主人から『もう一つ食べたくなるようなお菓子を作れ』とよく言われましたが、今もその言葉を忘れず、初心を貫いています。」素材の吟味はいうにおよばず、ケーキそのものを愛する気持を持って作業を進めることが大事と、後進を指導する。


「自分が作ったケーキが店頭でお客様にひきとられて行くのを初めて見た時の、あの感激を忘れずに励めと言ってます。」日本における洋菓子のメッカ・神戸での修業を求めて各地からやってくる従業員に、技術の上達の秘訣は心にあると説く上野さん。工芸菓子の分野でも第20回全国菓子大博覧会総裁賞など多数の受賞に輝く彼の今後の目標は「お菓子を食べていただくゆったりした環境づくり」。季節感あふれた洋菓子を味わいながら、生きる喜びもまた味わってほしいと願う。