紳士服 / 淺山 章一

平成7年認定
昭和14年生 平成16年没
勤務先:テーラーアサヤマ

生地の特性をつかんだクセ取りに優れ、シルエットの美しい洋服を作る。
また、アームホールと袖山のバランスの割り出しに独自の計算方法を確立。

受賞歴

”独学で編み出した秘訣を業界の財産に”


大阪生まれの岡山育ち。神戸に出て湊川の洋服店に就職した。昭和30年、販売から技術への転向をめざし三宮の洋服店に移って修行を重ね、同37年「テーラーアサヤマ」を開業した。「親方がいませんでしたので、自分なりの勉強法で技術を磨きました。」平成元年全国技能グランプリで労働大臣賞を受けたのをはじめ、数々の受賞に輝く腕前に成長したが、特筆すべきはとくに難しいとされる”袖付け”に優れていること。裁縫の工程が進み、袖を付ける段階に至って多くの職人が泣かされる。


身頃に対し、袖の方に手加減でゆとりを付ける“いせ量”を加減してもうまくいかず、何度も袖を付け直すことが多い。それを、どの様に裁断したものを渡されてもきれいに仕上がる機能的製図法を、淺山さんは編み出した。「アームホールと袖山のバランスの割り出しに私なりの工夫をしたんですよ。」その努力が彼ならではの秘訣を生み出すこととなった。せっかくの血のにじむような努力の結果得たテクニックにもかかわらず、惜しげもなく多くの同業の志に伝授するところに彼の人間性を見る。「技術を業界みんなの財産にすることによって、また新しい技術を生み出していけばよいのです。」
生地の特性をつかんだクセ取りはもちろん、タキシードに拝絹を縫い付ける作業にも名人芸を発揮する淺山さんだ。