広告美術 / 磯山 朝男

平成6年認定
昭和8年生 平成23年没
勤務先:(株)第一工芸

広告書道の技術に優れ、ゴシック文字の新書法「磯山流」を考案。労働大臣卓越技能章受賞。

受賞歴

”風合と合理性を兼ね備えた広告文字”


ホテル、ショッピングビルなど大規模建築の広告、サインの製作を手がけ、市内の高層建築物の広告サインの多くにかかわってきた。「目立てばいいという時代が過ぎて、これからの広告は環境にマッチしたものでなければ。」企業や建物のあり方を主張する意味で、広告は“顔”だとする。
その反面、昔と変わらぬ手書きの文字がますます重視され、磯山さんの広告書道が他にマネのできない卓越した技能として〝現代の名工″と称されるに至った。「機械が文字を送り出す時代ではあっても、今もなお、やっぱり人間の手が書いた文字でないとというジャンルがあるんですよ。」独特の風合いを打ち出したい看板や表彰状など、磯山さんの手が要求される仕事は多い。


中学卒業後、岡山県津山市で広告美術工になったのがきっかけ。絵が好きで、15歳の時、油絵が県展に入選した腕を買われ、映画の看板を描くようになった。3年後、神戸に来てレタリングを修業。24歳で独立した。このころ、ゴシック文字の新書法「磯山流」を考案。従来、看板用の文字は“はね”や湾曲部分があると、何画かに分けて書くのが普通だったのを、一気に書くことで勢いをつけ、作業時間も短縮するという手法。「筆を指の中でうまく回転させるのがコツ。」あらゆる字体に熟達した結果と言えよう。
「手書きでないと伝えられないものがあるんです。」人の心のぬくもりを磯山さんは表現し続ける。