印刷 / 赤井 三男

平成6年認定
昭和10年生 平成29年没




オフセット印刷において、温度・湿度の変化を敏感に読み取り、微妙な色調を表現。

受賞歴

色合わせで描くさまざまな夢


赤井さんが印刷業界に入って間もなくの昭和40年代、単色の印刷機のローラーにセパレーターを取り付けて多色刷りを行う「カラーセパレーター」がお目見えし、それをいち早く導入。熟達した技術でマッチ箱商標ラベルの印刷で名声を高めた。その高度な技術が現在の主流となっているオフセット印刷にも活かされている。「どんなに機械が進歩しても、かんじんなのは調肉と呼ばれる色合わせです。」と赤井さんは語る。「インキはやわらか過ぎても固過ぎてもダメで、ほど良い加減がいい色に刷り上がる。」そのためには、水と油の関係をじゅうぶんに理解して、温度や湿度の変化を敏感に読み取ることも大切という。
これらの経験にモノをいわせ、色を特別に調合した“特色” をたくみに使用して微妙な色調を実現した。パンフレットの製作で多くのデザイナーから絶賛された実績もなるほどとうなずける。


小学生のころ、父の仕事場をのぞくと石版があった。父は証券の銅板や石版を作る仕事をしていた。「カエルの子がカエルになったんですね。」自らを“仕事の虫”と呼び、一生を現役オペレーターとして過ごしたいと赤井さんは希望する。
その理由は、まっ白な紙にさまざまな表情が写し出される喜びを身をもって実感し続けたこと。「機械を自由に使いこなして思い通りに印刷ができ上がった時の感激は何にもまさるものです。」40年を超える印刷業界の生活ながら「入学があって卒業のないのが技術の世界。」と、いまなお自ら研鑚に励む毎日。