型枠施工 / 野口 友春

平成5年認定
昭和7年生 平成12年没
勤務先:(株)タカシマ

安藤忠男氏設計の姫路文学資料館をはじめ、多くの打ちっ放しコンクリート建築の型枠施工で高い評価を得ている。特に円形型枠が得意。

受賞歴

”コンクリートが光る腕のさえ”


建物を鋳物に例えると、その鋳型にあたるものが型枠。流し込んだコンクリートが固まるまでの間、型作りに必要な木の枠だ。その出来ばえが工事全体の仕上がりを良くも悪くもする。近年、木に代わってわってプラスチックをベースにした複合体・ハイパネルが生まれた。その実用新案を考案したのが野口さんだ。野口さんがあえて化学製品による型枠を思いついたのは、「ベニヤなどの代用品として、熱帯雨林の伐採の削減に少しなりとも寄与したいから。」世界的に森林破壊が問題となっているいま、これからは地球環境にやさしい工事姿勢が不可欠の時代という。


折しも仕掛り中の荒田地下駐車場工事現場。大手建設会社のジョイントベンチャーのもとに、野口さんの手がけるコンクリート打ちっ放しの壁や柱が光る。「4~5トンもの側圧を計算しながら鏡面仕上げするのがコツですが、できばえは、グループ作業の成果です」と、作業員をねぎらう思いやりに富む管理職である。コンクリートの打ちっ放しの第一人者、安藤忠雄さん設計の姫路文学資料館で高い評価を得た腕のさえが、ここでも見られる。とくに、円形型枠が得意で、駐車場にギリシャ建築を思わせる円柱が何本も作られて、完成が楽しみ。「コンクリートはいったん固めてしまうと、もはや削ることができないので神経を使う仕事です。」15歳の時、裸一貫でこの道に入って50年近く。「この道しか知らないからこそ得る喜びもあることをしりました」と満足げな野口さん。