印刷 / 郡 一夫

平成5年認定

昭和15年生 / 神戸市垂水区在住

カラー印刷作業における印刷、特に管理面からの目利きに優れている。また、印刷の見当精度向上のため、独自の改善を行い、前作業時間の短縮を図っている。

受賞歴

水と油の相反する性格をみごと使い分け


「印刷の中の印刷が私の仕事です。」この一言に自信がみなぎる。デザイン企画、文字組版、版下部門、製版、刷版など幅広い印刷業務の中でも、オフセット印刷の技術に定評を得ている。同じ機械を動かしても、技術者によって出来上がりが大きく異なる。「コツはインキの盛りかげんなんですよ。原稿の良さを印刷がこわしてしまうようでは失格です。今の技術を持ってすれば、元原稿より素晴らしい印刷物に仕上げることだって不可能ではありません。」
試し刷りが成否の鍵となる。普通は2~300枚で充分なところを4~500枚は刷る。「インキが安定するまでやってみないと気がすみません。この見当合わせで水とインキのバランスを整えるのがオフセット印刷の命です。」本来、相反する水と油の性質をたくみに利用したのがオフセット印刷。昼と夜とではバランスに微妙な相違を生じ、さながら生きものを扱うようにやさしく印刷機に接する。


 全国の印刷業者に配布する「日本印刷年鑑」の印刷を手がけるほど、その技術の確かさが高く評価されている。「カラー印刷は製版で7~8割、色が決まる。せっかくいい色が出ているのに最後に紙に載せる段階で失敗してはつまらない。駅伝でいえば最終ランナーです。立派なゴールインを果たすよう慎重の上にも慎重を心がけます。」カタログやポスター、パンフレット・・・“色もの” を見るとファイトが沸く郡さんの健康の秘訣は休日の卓球とジョギング。几帳面な態度がそのまま仕事になった信頼のおける“色の魔術師”だ。