建具 / 大柄 昭司

平成5年度認定

昭和9年生 / 神戸市兵庫区在住

建具製作にあたり重要となるデザイン、木取りに手腕を発揮。特に数少ない数寄屋建築、社寺建築の建具に定評がある。

受賞歴

  • 卓越した技能者(現代の名工)
  • 黄綬褒章

見て楽しく、しかも実用的に


昭和の始めから父、大柄光男さんが営んでいた建具店を手伝ったのがこの道に入ったきっかけ。父が墨を打ったものを息子がガンドウノコで木取りするという毎日。そこから昭司さんの才能が芽を吹いた。「機械化の時代になっても、人間が手で作り出す建築芸術であるという基本は忘れていません。」 「容れ物である建物と不釣り合いになってはダメだし、絵画と同じように、見て楽しい要素が必要。それでいて実用的でなければという制約もある。」建物に対する大きさのバランスを重視することが成否のカギ。木曽絵や吉野杉を材料に神社や寺ではどっしりと大きく、茶室では細くきゃしゃに、しかし優雅にと仕上げていく。いずれの場合も重要となるデザイン、木取りに抜群の手腕を発揮し、ことに社寺建築や数寄屋建築の建具製作の技能は右に出る者がないほど。


湊川神社、長田神社、兵庫石井町の霊山寺から個人の屋敷まで、大柄さんの手にかかる作品は多いが、いずれも古来より伝わる日本建築の手法を熟知したうえで、磨きあげた技術を余すところなく発揮した努力と汗の結晶だ。天井、欄間、障子、火燈窓(寺社などに使われる装飾性の高い窓)・・・日本調建具が身上と思いきや、意外、西洋風建築の代表、異人館の“上げ下げ窓”まで手がけるという器用さ。「欧風建築の精神まで理解できる旺盛な研究心に頭がさがる」と、建築家の間でも評価が高い。業界の発展のために骨身を惜しまず行動するなど、世話好きな点も、大柄さんならではの人柄の表れだ。