和裁 / 石田 和美

平成7年度認定

昭和10年生 / 神戸市中央区在住
勤務先:石田和裁

和裁全般に精通し、特に本人の考案による十二単衣風打掛を得意とする。
多くの後進も指導・育成。

受賞歴

  • 黄綬褒章

技のみならず心のあり方まで


反物にキズやシミがないか慎重に検反のあと、蒸気アイロンで地の目を伸ばしたり詰めたり、地直しにかかる。「絹織物は生きものですから、いたわるような気持ちで・・・。」裁断、手縫い、仕上げと進めていく和裁は日本人の手の器用さがモノをいう。父の仕事を見て成長し、ためらうことなく跡を継いだ。「手間ひまかけて縫い上げた着物を仕上げる時の気持ちは、何ともいえないほど充実感がありますね。」 ”合わせ” は裏と表をくっつけて一枚にするが、ちゃんと裏と表が合っているか?ビリついていないか?などをチェックしながらアイロンがけをする。


「納得のいかないところがあれば、もう一度縫い直しもします。」日本古来の民族衣装である和服の工程全般に優れ、とくに和服の良否を決定づける衿まわりを非常に美しく仕上げることで定評がある。
伝統の技法を守り抜くだけではなく、自分ながらの工夫をめぐらせて十二単衣風打掛も考案、注目を集めた。衿や裾に異なる素材を幾重にも重ねて、十二単衣に見えるようにしてあるものの、実際は普通の打掛と同じ感覚で着られるという工夫をほどこしたもの。
六甲山のふもとにある「石田和裁」は全寮制で、技術の指導にもまして行儀作法をきびしくしつけることで知られている。「将来のことを考えて、最初にきちんと基本を身に付けてもらうんです。」
これまでに指導育成した後進は600名を越えるという。技のみならず心のあり方をも教える、使命感に燃える石田さんだ。