鋳造 / 岸本 光男

平成7年認定

昭和19年生 / 神戸市垂水区在住

鋳造の工程全般に精通し、確かな技術・技能が生産性の向上に貢献。
その技能は精密鋳造の分野でも発揮されている。

受賞歴

煮えたぎるインゴットに人生を賭ける


兵庫県神崎郡の出身で、三菱重工業神戸造船所の養成校に学んだ。工場に配属の時、「あそこにだけは行きたくない」と思っていた鋳造課に。当時は船舶エンジン本体を作るのに黒鉛を用い、指の爪の先までまっ黒になるほど汚れたイメージの職場だった。
それから15年、昭和50年代に入って二見人工島に進出、「東洋一の鋳物工場」が実現。イメージは180度変化して、クリーンで省力化の行き届いた仕事場となった。手がける品物もエンジンに加えて、発電機やボイラーの部品など幅広い鋳物製品を生み出すようになり、ハイレベルの技術が必要とされるようになった。
「図面から模型を作り、鋳型にはめ込んで製品にしますが、最初は平面の設計図なのが、最後には3次元の立体に仕上っていくんです。出来上った時の喜びは何ものにも代えられませんね」と、目を細める。


時代と共に作業の要領も変化し、昔は鋳型を山砂や生砂でこしらえたのが今は樹脂のフラン砂に。変わらないのは温度と湿度を如何にうまく扱って、いい製品に仕上げるかということ。「品物の顔を見るまでは安心できませんよ。」インゴットと呼ばれる金属を溶かせた湯を1600度の高温で処理し、見る見るうちに鋳物に仕上げていく。クライマックスは危険この上もないが、感動的。
鋳造の行程全般に精通し特に鋳型組立を得意とする。技術の確かさに加えて、研究熱心な姿勢が精密鋳造の分野にも活かされ、形となって現れている。「我が子を嫁に出すような気持で、無から有を作る-これが秘訣です。」今では鋳造に人生を賭けている。