寝具 / 小西 ひろ子

平成6年認定

昭和23年生 / 神戸市長田区在住

綿ふとんの生命である綿入れ作業に優れている。
また、講習会の講師として多くの技能士を送り出している。

受賞歴

  • 卓越した技能者(現代の名工)
  • 黄綬褒章

ふっくらしたふとんでいい夢を


一見、何気ないふとんでも、綿の入れ方によってずいぶん寝心地が異なる。綿ふとんの生命ともいえる綿入れ作業に優秀な技術を持つのが小西さんだ。「敷ふとんは中高に綿を入れるのがコツです。体の重みを計算して、適度に綿をまん中に多く入れるよう加減するんです」綿を薄板のようにして何枚も重ね、“側”で包み込む“のしつけ” と呼ばれる作業の手つきが実にあざやか。
「掛ぶとんは綿の繊維のタテ、ヨコをしっかりと見きわめて、形くずれしないよう心がけます。美しいばかりでなく、あくまでも実用性を重視しないと、いいふとんとは言えませんからね」もともとちぎれやすい綿を扱うので気の配りようはひとしお。しかし、やさしさだけではこの仕事はできない。繊細さに加えてけっこう力が要求される。


全日本技能グランプリ2位をはじめ、数々の受賞歴を持つ小西さんが手がけたふとんは、ふっくらとした丸みのなかにも、しっかりとした充実感があり、使い込むほど体になじんでくるという素晴らしさが身上。母がふとんの側を縫う姿を見て大きくなった。中学卒業後、京都にあったふとんの技術学校に1年、さらに、京都の職業訓練所に1年学んだ後、この仕事で生計を立てるようになった。「子供が10ヵ月の時に主人が病死しましたので、女の細腕でここまでやって来ました」と述懐する。
「人生の1/3は寝て過すといわれますが、このふとんで少しでもいい夢を見てもらえたら。」明るい笑顔で仕事に打ち込む小西さんだ。