洋菓子 / 佐野 靖夫

平成22年度認定

昭和28年生 / 神戸市垂水区在住
勤務地:(株)レーブドゥシェフ

繊細さと夢があるマジパン細工や飴細工で高度な技術とセンスの良さが高い評価。安全食材を吟味して、独自に編み出した計算式と割合方法で納得いくケーキづくり。

受賞歴

  • 洋菓子製造工1級
  • 第21回スプラウト洋菓子デザインコンテスト東京 優秀技能賞
  • 第22回スプラウト洋菓子デザインコンテスト東京 最優秀技能銀賞、特別技能賞
  • 第23回スプラウト洋菓子デザインコンテスト東京 最優秀技能金賞、最優秀技能銅賞
  • 東京現代洋菓子作品展 連合会会長賞、技能銀賞
  • 第25回スプラウト洋菓子デザインコンテスト東京 最優秀技能銅賞
  • 第27回スプラウト洋菓子デザインコンテスト東京 優秀技能賞
  • 兵庫県洋菓子協会27回クリスマスコンテスト、バレンタインの部 最優秀賞
  • 兵庫県洋菓子協会29回クリスマスコンテスト、バレンタインの部 優秀賞
  • 神戸市優秀技能者賞
  • 神戸市技能奨励賞
  • 神戸市技能功労者
  • 兵庫県技能顕功賞
  • 兵庫県 労働・技能功労者 表彰
  • 東久邇宮記念賞
  • 東久邇宮文化褒賞
  • ひょうごの匠認定

ケーキを通して人と人との絆を深めてもらう、そのためにも一つ一つの作品に想いを込めて・・・。


神戸の板宿商店街の和菓子屋「明月庵」の三男坊として生まれた。酒を飲まず、食べることだけが楽しみであった父が、うまいものを食べさせると評判の店によく連れて行ってくれたのが、後に、味を極める仕事において大きくモノを言う。腕白少年のあり余る力を善良な方向に使わせるために、小学校から柔道を習わせられ、中学、高校と進んで黒帯二段の腕前となり、大会で個人優勝も果たした。そんな佐野さんが関心を持ったのが、北海道の酪農。高校を卒業して十勝の牧場で働くようになった。牧草づくりや搾乳の仕事のかたわら、自分が絞り上げた牛乳の上部に自然発生的に出来る「生クリーム」のおいしさを知って、心がときめく。酪農王国と言われる帯広で、一年半を全力投球したにもかかわらず、挫折感めいた気持ちを抱いて札幌大通り公園にたたずんだ時、ふと口にした一個のケーキにはっと自分の進むべき道を自覚した。そのころ日本に2校しかなかったケーキ専門学校の一つ、東京製菓学校に即入学。ケーキづくりのおもしろさに目覚めていった。1974年、卒業して銀座の「エルドール」に入社、連続して東京の洋菓子コンテストで受賞の腕前に成長をとげる。1981年には現代洋菓子作品展において、チョコレートで作った帆船が全国レベルの連合会会長賞を受賞したのを機に独立を決意し、出身地・神戸に戻る。パンや洋菓子の街として知られる神戸の西の端、垂水の住宅地に構えた店は小さくとも、名前は「レーブドゥシェフ」、日本語で「シェフの夢」と大きく銘打った。生家が和菓子屋という環境を活かして厳選した糖類を使用し、北海道の牧場体験にもとづく生クリームをはじめ、天然食材にこだわり、独自の技術を打ち立てていった。「おいしいという当たり前のことだけではなく、安心出来るおいしさをモットーに商品づくりと取り組んでいます」。


時には野菜そのものがケーキになる。パンプキンやサツマイモがおしゃれなフランス風味のケーキに生まれ変わるのは珍しいことではなく、旬のケーキが店頭に並ぶのを楽しみに訪れるファンもいる。自分なりの創意工夫を凝らすのが得意の佐野さんは、アイスクリームにしても、コクを出すための秘訣として全脂濃縮乳を材料に乳固形分を仕上げるという持ち技を駆使したりする。また、ケーキに加えるフルーツも地場産果汁分50%以上の物を使用し、安定剤を使わないで寒天などの自然素材を用いて仕上げる。こういった心配りで、おいしいだけではなく、安心して食べ続けてもらえる商品づくりを実践している。自分なりに納得いかないとショーケースに並べないという研究熱心さが、材料の配合方法の計算式など独自の秘法の編み出しにつながり、それがまた新しい商品の誕生へと夢が広がっていく。とりわけ、佐野さんが興味を持って取り組むのは繊細さが要求されるマジパン細工や飴細工で、高度な技術に磨き抜かれたセンスをプラスして、まさに"味の芸術"といった作品を要望に応じて世に送り出している。培った技術を教育機関で親子ケーキ教室を開いたり、施設で気軽にケーキづくりを楽しんでもらったりなど、社会貢献にも熱心。さらに、佐野塾を主宰してプロの洋菓子職人の育成にも尽力し、これまでに30名近い独立開業者を育て上げ、業界のレベルアップにも貢献してきた。「私の洋菓子を通じて絆を深めてくれる人の期待を裏切らないよう、常に研鑽あるのみです」。自分が体得した絆の輪を広げる洋菓子づくりを継承してくれるプロを送り出す責任感――それが、佐野さんの新しい"シェフの夢 "ともなり、ひたすらにこの道を歩き続ける。