造園 / 大西 教博

平成22年度認定

昭和22年生 / 神戸市西区在住
勤務地:(有)大西園芸

華道の心得を基礎として、石、木、花を巧みに活かして、個人の邸宅の庭から公共の日本庭園、洋式公園まで秘法とさえ評価される手腕を発揮する造園マイスター。

受賞歴

  • 造園施工管理技師1級
  • 造園技能士1級
  • 職業訓練指導員
  • 未生流(庵家)華道師範代
  • ひょうごの匠認定

「家庭」という文字には「庭」があり、それがいかに大事であるか、身をもって造園の技術と心を内外に示す。


叔父が営んでいた造園業を父が手伝い、独立した。父の仕事ぶりを見て育ち、兵庫県立有馬高校園芸科に進んだ。さらに、農業大学校に進学、全寮制の2年間が運命を決定的なものにする。学業のかたわら、華道未生流庵家(家元芦屋市)に入門、師範の免許を取得する。自然素材を用いて環境を整備し、人々に安らぎをもたらせる仕事において、その修行が大きくものを言う結果につながった。
「未生流の基本理論『格花』や『五陽六陰』にもとづく植裁の割付や剪定の仕立てが私なりのやり方を打ち立てることにつながりました」と原点を振り返る。日本の伝統的作庭手法の「真・行・草」を極めたことも言うまでもなく、築山、平庭、茶庭、枯山水、坪庭、築山池泉庭園などをこなす第一人者と評価されるまでに成長した。造園のプロフェッショナルとして、公共の大規模な公園から個人の邸宅まで数多くの仕事をこなして来たが、近年、後進の指導に当たって説く持論の一つに「家庭という字を見ても、家と庭という字が合わさって成り立っている。このことからも、いかに庭、つまり環境が人間形成に与える影響の大きいことを忘れてはいけない」というのがある。そのための具体策として、「立地条件を考え、そこに配置する植物の生態や特性を考えたうえで、日本庭園や西洋式庭園など目的に叶った庭園づくりをすべき」とする。ひとりよがりはつつしむべきで、注文主の要望を理解したうえでその道のプロとしての技術を発揮すべきと肝に銘ずる。


作庭に不可欠の素材の活かし方もバツグンで、とりわけ、石組みの造形技術は業界でも高い評価を受け、山、谷、川、野、磯、海、石などそれぞれ異なった石質、石相を正確に識別し、違った持ち味の石を巧妙に配置する高度な技能を確立し、自然の風趣を巧みに採り入れた作庭技法は秘法とさえ言われている。例えば、枯山水庭園は全く水を使わないで水流や湖や海を表現する技術が試され、石と石の間に草木類をうまく配置して水が流れているかのように感じさせるんです」とコツを語る。また、石本来の色を利用して「白い石で陸を表現し、黒い石で水や海を表現するのです」と、後進の指導に当たっても具体的なアドバイスを心得ている。
「人にやさしく、土にやさしく、花や木にもやさしく」という"大西流"を継承して、二人の息子が父の仕事を助け、「家庭」の大切さを身をもって示しているのが立派。 淡路島公園や西須磨小公園など公共の庭園から個人の邸宅まで、のちのちまで形に残る仕事振りを見て、父と同じ道に入った息子たちを頼もしそうにながめる教博さん。神戸市とフランスのマルセイユが姉妹都市提携を行って50周年の節目に、マルセイユに日本庭園を造る企画が持ち上がり、兵庫県造園緑化組合連合会理事で西農造園協会の会長をつとめる大西さんが前会長と共に現地に飛んで指導を行うことが決定した。「フランスの職人さんたちにフランスの素材を使って日本の情緒を表現してもらう難しさはありましたが、世界的に評価されるフランス庭園の本場で、日本庭園を実現出来たことは何にも勝る喜びでした」と感想を語る。神戸マイスター初の造園マイスターが、ヨーロッパでその存在を広くアピールした意義は大きい。