機械組立 / 瀧川 雄臣

平成17年度認定

昭和30年生 / 兵庫県加古郡在住

地中に穴を開けるシールド工法の名前をよく耳にするが日本の技術が世界のトップレベルにあるという。その発展をささえてきたのが瀧川さんだ。

受賞歴

シールドマシンで日本の技術を世界に


昭和49年の入社当時は、まだ手掘りの名残りが若干あったという。それが、電動、油圧、コンピューターを駆使した完全自動掘削機へと著しい変化をとげる現場で、自らがその技術の向上に寄与してきた。
「土質に合わせて土圧式をはじめ、泥水式、岩盤対応など色々なシールドマシンがあります。その一台をとってみても、ベアリング、ジャッキ、ボディ、カッタービット、カッターヘッドなどを吟味したうえ、配管、配線などすべてを考えて、不都合が発生する可能性があると判断すれば図面に変更を加えるのも役目です」現場一筋に仕事を貫くオーソリティならではの説得力のある言葉だ。
三菱重工が世に送り出したシールドマシンは1650台を超えるがその大半とかかわって来た経験が、個々の現場に適した組み立て方法の立案につながる。最も効果的な組立方法から設備、工具の選定まで瞬時に把握して的確な作業指示を出すのが監督・指導者の役目。「地球に穴を開けるという重大な作業ですから事前の対策をしっかり立ててトラブルを起こさない気構えで臨むのは当たり前のことです。
ひとたび完成した工事現場は永久に残りますから、責任が重いだけに、やり甲斐は十分です。」


数多くの工事のなかでも特に代表的なものとしてあげられる英国と仏国を結ぶドーバー海峡のトンネル工事では、世界最速の掘進記録を樹立した実績も持つ。「海底からさらに下の地下に直径9mの穴を開けて行きました。通常1日8m程度の掘削速度であるが、3シフトで24時間の作業を行い、当時として世界最速の1日60mのスピードで掘り進みました。」。現地のゼネコンに対する指導・据え付けはそれでも1年がかり。それほど大きな歴史的工事だ。「苦労はいい思い出になります」。
瀧川さんの仕事はまさに地球単位で、スペインの高速鉄道も手がけた。大型機械製作の経験のない現地メーカーを相手に、鉄板を曲げるところから、取り付け、溶接など山のトンネルを掘削するために必要な全ての技術を指導し、性能・品質管理に実力をいかんなく発揮してここでも短期間に工事を完成させた。
淡路島岩屋生まれで、機械好きだったことから、昭和49年三菱重工に入社、一筋にシールドマシンと共に歩み、国内はもちろん、香港、シンガポール、中国、オーストラリアなど世界に日本の技術を普及させている。故郷の淡路島にかかる大鳴門橋も記念の工事の一つ。文字通りのもぐら工法が脚光をあびるめざましい働きを継続し続けているその功績は大きい。