機械組立 / 吉見 博

平成10年認定

昭和25年生 / 三木市在住

各種機械設備の据付から修理調整・修復など幅広い仕事をこなす。

受賞歴

隙間の技術に生きる機械の虫


製鉄用の機械設備の据付から建設機械、上下水道設備、食品加工設備に至るまで機械設備の組立はもちろん、修理調整、修復など幅広い仕事をこなす。「大がかりな製造プラントの一部なんかですと、自分がどんな機械を手がけているのか全体像をつかみきれないまま腕を振るわねばならない難しさはありますね。」
湾岸戦争の時には戦局まっただ中のリビアにいた。アメリカで鉄粉プラントの据付指導をしたことも。どこでどんな機械に接しようと、すべて機械の性能は「隙間の技術の良否で決まる。」と言い切る。一筋に三十年この道だけを歩いてきた吉見さんが、その目と耳と体から生みだした名言だ。
例えば、軸と軸受けを見た場合、直径10cmの軸が回転するには0.1mmの隙間が必要という。隙間が少な過ぎると回転しないが、多過ぎるとガタついて消耗も早い。微妙な加減はきさげで調整する。「機械万能の時代と言われようとも、最後に残された隙間をコントロールする技術は人間に頼らざるを得ない。」と吉見さんは言う。ミクロの単位を計るスケールで確認しながらきさげ (精密仕上げに用いる手工具)を自在に扱い、みごとな密着度の軸受けを作る。


「隙間の管理がいかにうまく出来るかが機械を作り出して行く者の命です。」
すべて自動化(数値)でことが済むと思われている時代に、今なお手(感覚)の技術がモノをいう部分があるところに誇りを感じ、後進の指導にも熱が入る。 神経をスリ減らして機械を修復した時、「うわべは元通りになっただけ。だが、その裏に一人の技術者の働きがある。」あくまで陰に生きる者としての喜びに新しい意欲を積み重ねて行く機械の虫だ。