自動車整備 / 畑　良明

理論と実践を両輪に

「自動車整備業者は昔は“修理屋”と思われていましたが今は“交換屋”です」と、ズバリ言い切る。とりわけめざましい進歩をとげる自動車業界で、複雑化する一方のメカニズムを、すっぽり交換してすまそうとする風潮のなかで、畑さんは極力オーバーホールして修理しようとする。「もともと、その車に備えられている部品をそのまま活かすのが一番いいですものね。」通常は困難とされるオートマチック車のミッションの分解整備さえやってのける。「車は治って当り前と、私は言いたいんです。人間に例えれば、医者から見放された患者ほどみじめなものはないでしょう」と、話す。「車検は定期検診、修理は治療ですね。整備士は時に内科医、時に外科医にならなくてはなりません。」

自動車整備全般に卓越した技量が評価されて、団体の研修会で講師をつとめている。自動車整備はもとより、機械工学全般に精通した幅広い指導ぶりに定評がある。「整備を一生の仕事にすることの誇りと責任を受講生に肌で感じてほしい。」乗用車はもちろん、バス、トラックなどの大型車まで整備をこなす技能に裏付けられた言葉だけに説得力がある。ボーイスカウトの指導者としてつちかわれたリーダーシップと持ち前の温厚な人柄が仕事ぶりにもにじみ出ている。