デザイン / 久保木 尚

平成5年認定
大正15年生 平成10年没
勤務先:久保木デザインルーム

デザインにおけるモデリング加工の技術に優れる。特に紙の特質を生かし、ペーパークラフトの技法を取り入れた模型の景観描写、緻密さに定評がある。ヘアをトータルファッションとしてとらえ、ニューヘア設定委員の経験も持つ。講師としても全国的に活躍。

受賞歴

”紙で作りだすもう一つの世界”


完成品の模型の製作はデザインにおいて重要な作業の一つといわれる。その分野で久保木さんは、紙を用いて精密模型を作る方法を確立した。代表作の一つ、阪急三宮ビルの模型など、その景観描写の緻密さが高く評価されている。木材やプラスティック、発砲スチロールなど多様な材料が使われるなかで、あえて紙にこだわる理由を久保さんは「紙は細工しやすいのが何より。鉛筆でしごくだけで丸くなりますし、建築模型など縮尺通りに作れるという利点があります」と説明する。また、紙はコストが安く上がるので、ウインドーのディスプレイーやPOPなどにもっと積極的にペーパークラフトを採用してほしいと訴える。


第二次世界大戦中を海外で過ごし、一命をとりとめた時、平和がよみ返った世で、デザイナーになっていた。昭和35年ごろ、特許・実用新案の仕事に関連して、精密模型を紙で作ったのがペーパークラフトを手掛けるきっかけとなった。以来、現在の芦屋芸術情報専門学校で講師をつとめるかたわら、各地に出向き、ペーパークラフトの指導に専念する毎日。「紙はラッカーを塗ることで強度が増し、半永久的な模型として使用が可能となります。紙で作れないものはありません。身近な紙をもっと活用してほしい。」メルヘンチックな人形から工業模型まで、この人の手にかかれば、薄っぺらなはずの紙が厚味を感じさせ、そこに、特有の世界を描きだす。