写真 / 伊藤 建志

平成6年度認定

昭和16年生 / 神戸市西区在住
勤務先:(有)宮前写真場

大学で学んだ理論に修業で得た勘をミックス。
たくみなライティング操作で格調高い写真に。

受賞歴

  • 卓越した技能者(現代の名工)
  • 黄綬褒章

光で描く動と静


動きのある写真と、静止した写真を常に念頭に置いてシャッターを切っている。従来の写真館の写真は動きを止めたポーズものが多かったが、伊藤さんは重厚に過ぎず、むしろ明るいイメージをねらった写真に仕上げるよう心がけて仕事をしている。「なるべくナチュラルな感じで、その人の魅力を強調するよう工夫しています。」
たくみなライティング操作と独自の薬品調合による格調の高い写真が県下でも指折りと評価されている。
日本大学芸術学部で学んだ理論を活かして卒業後、雑誌社に就職し、写真雑誌「特集フォトアート」で写真のノウハウを解く仕事を担当したことが何よりもの経験となった。


 戦後、父が長田神社前で創業した写真館を継承、伝統に新しい感覚をプラスして独自の道を切り開いた。神社前という立地条件から宮参りの赤ちゃんの撮影も多く手がけるが、ただでさえ演技をつけにくい被写体を自然な雰囲気のうちに明るい表情で楽しい写真に仕上げるテクニックが人気を呼んでいる。また、建築写真の分野でも、自然光とタングステン光など、ミックス光線をバランスよく処理した独特の撮影法が定評を得ている。「写真は文字通り、光と影の世界。いわゆる陰と陽をどうあやつるか、本当に奥の深い仕事ですよ」と少年のように目を輝かせる。
人物から静物まで、特性をみごとに映し分ける仕事ぶりがひときわ精彩を放つ伊藤さんだ。