機械組立 / 梅田 誠

令和5年度認定

昭和46年生 / 明石市在住
勤務先:JIMテクノロジー株式会社 神戸事業所 製造部

トンネル掘削機・シールドマシンの製造における機械組立、据え付け・調整、修理に至るまでチームを率いて成し遂げる第一人者。

受賞歴

  • 油圧装置調整技能1級

大都会の地下深く、山岳地帯の地中深く、安全に着実に。彼が生涯をかける技術は未来へつながるトンネルを創り出す。


前方の土砂を削り、後方に土を送り、崩れないよう同時にトンネルの壁「セグメント」を組立てながら前進する機械・シールドマシン。そのスペシャリストが梅田 誠さん。
「東京へ出張して地下鉄に乗ると色々な駅で手掛けたマシンが使われたことを思い出して嬉しくなります」高層ビルが林立する東京において縦横無尽に地下鉄の路線構築が出来たのはシールドマシンあったればこそ。そんなシールドマシンが我が国で初めて使われたのは1930年代の関門トンネル工事。下関と門司を結ぶ海底トンネルの掘削で偉力を発揮して以後、海底・山岳・都市部を問わずトンネル工事に無くてはならない建設機械として進化してきた。
梅田さんとシールドマシンとの関わりの発端は1990年、兵庫県内の高校を卒業して三菱重工業・神戸造船所に入社したこと。「社内教育でみっちり一般知識や基礎技術の訓練を受けた後、配属されたのがシールドマシンを組み立てる部門でした」
子供のころから物作りと機械が大好きで、大きな機械が動く姿にとりわけ関心があったという梅田さんにとって、生涯取り組むにふさわしい仕事と出会えたまさに適材適所な人事だった。
マシンは直径2m余りから16mを越えるものまであるが、いずれも製造に数か月から数年を要する。設計部門から受け取った図面に従って、鈑金や機械加工のビジネスパートナーとも協力し、巨大な鉄鋼の円筒を造り、円筒の先端部に土砂を削るための装置等の構造物を組立てていく。心臓部となる電力や油圧の装置をはじめ、カッタービットやセンサーなど各分野において専門のビジネスパートナーが製作した部品を取り付けていく。先進技術を結集させた機械の組立ては30人ほどのチームが一丸となってはじめて計画通りのものが出来上がる。


神戸市営地下鉄でもシールドマシンは活躍したが、その海岸線・和田岬駅のすぐ近くにあるJIMテクノロジーにおいて、今では製造部・組立グループ長の要職を務めるようになった梅田さん。
「工場で完成品となっても終わりではありません。実際の施工をされるゼネコンの皆さんが安心して機械を動かせるよう指導させて頂くまでが私たちの仕事です」
東北新幹線、北海道新幹線など国内に留まらず、上海大連路トンネルやドバイメトロプロジェクトなど海外でも長期出張の業務を経て今日がある。
工場で組み上げたマシンは試運転した後、運搬できる大きさまで分解し大型トレーラーや貨物船で輸送。工事現場で再び組み上げて、調整や運転要領の指導を行い発注先に引き渡す。年単位に及ぶこともあるスパンの長い仕事で、共に過ごしてきたマシンと別れる時は寂寥感さえ覚えるという。
「自分たちが来る日も来る日も心血を注いで造り上げたマシンは我が子も同然。ただただ無事で工事が完了することを祈るばかりです」
遠くを見つめるように語る梅田さんはこれまでに30を越えるマシンに命を宿らせてきた。そんな彼を20数年間に亘って見てきた上司が梅田さんの人柄を語る。「何よりも信頼度の高い人です。巨大な重機でありながら精密性が要求されるシールドマシンの製造監督としてまさにうってつけです」と太鼓判を押す。

「手掛けたマシンがあちこちで働いて、多くの鉄道・道路・上下水道等が生まれたと思うと、長らくこの仕事をやってきて良かったですねえ。この感動を後輩たちに引き継ぐことがこれからの私の役目と心得てまっすぐにこの道を歩んで行きます」と意気軒昂な梅田さん。
国内外の社会インフラを支える陰の立役者がここにいる。